さえずり / A bird call
作品概要
- 制作年
- 2023年
- 素材
- 顔料、油、麻キャンバス
- サイズ
- 242mm(幅)×333mm(高さ)×18mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:アーティストを目指すようになったきっかけから教えてもらえますか?
高屋:幼い頃から絵を描くことが好きで、いつも落書きをしていました。中学生のときに絵が好きだと自覚し、美術の先生に描いた線画の絵を見てもらいました。そのときに“これだけのエネルギーがあるのなら、大きい作品を描いてみたら?”と言われ、初めてアクリル絵の具で描いた作品が、国展(国画会が運営する公募展)に当時最年少で入選したんです。新国立美術館に展示された自分の作品を見て、これを続けていきたいと真剣に考えるようになりました。それ以来、夏休みに海外の短期サマースクールで、いろんな表現を勉強しました。デザイナーのジョン・ガリアーノがデザインしたチュールの写真を見て感銘を受け、彼が学んだロンドン芸術大学セントラル・セント・マーティンズに進み、その後、ロンドン大学のゴールドスミスでインスタレーションや映像など現代美術の勉強をしました。2016年に帰国したのですが、日本にはコネや人脈がなく、どうしたらいいかわからずに途方に暮れました。
倉本:海外で勉強していたのであれば、感覚的な部分でも日本と違いがありそうですね。
高屋:色彩も海外で良いと感じていたものが日本ではビビッドすぎたりもしたので、感覚の調整に時間がかかりました。それと、描いたものが長く残ってほしかったので、画材も油絵にシフトしたのですが、その変化を表現に落とし込むことに苦労して、いっときは描くことが嫌になってしまったのですが、2019年にシンガポールで壁画を描くプロジェクトに関わったのをきっかけに、ふたたび美術に戻ってきました。
倉本:桜のシリーズに代表されるような今の画風はいつ頃から出てきたのですか。
高屋:桜のシリーズは2020年に始めました。それまでは自分のことを表現したい、わかってほしいという情熱が強かったのですが、コロナ禍の期間に、”絵画にできることってなんだろう?”ということをあらためて自分の中で問い直すきっかけになりました。 そして、いろんな人が共感できるモチーフとして桜を選び、命の動き、躍動感といったものを描くようになりました。最初は日本画の美に感化され、静寂を感じさせる線のない空間を描いてみたくて、無線画法で描いていましたが、のちに線のある、風のある、動きのある桜へと変わりました。
倉本:高屋さんの作品は、見えているのか見えていないのかわからないような不思議な感覚を覚える絵ですよね。
高屋:私にとって絵を描くことは、見えているものを記録するのではなく、私が空間の中で見て感じているものを、平面のキャンバスに捉えようと試みることです。そして、作品が完成した時に、鑑賞者が同じような空間の経験ができるような場として開かれることを試みています。真っ白いキャンバスに、頭の中に見えているものをしっかり捉えて可視化しています。線画に始まり、今まで国内外でやってきたさまざまな要素を新たに再接続し、新しいものにしていくことに関心があります。