Crystal Series 32 (Asuka)
作品概要
- 制作年
- 2019年
- 使用素材
- mixedmedia
- サイズ
- 180mm(幅)×240mm(高さ)×130mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:杉田さんの画家でありながらも他とはまったく違うというか、どちらかというとジャクソン・ポロックのようにアプローチという部分で絶対的な個性があります。そうなっていったのは、どんな経緯だったのですか?
杉田:原点になっているのは子供の頃、絵を描いたときに、キャンバスよりも無造作に絵の具を出したパレットのほうが綺麗だなと思ったんです。アクリル絵の具を紙製パレットの上に出すと、絵の具がペラっと綺麗に剥がれることに気がついて、絵を描きつつも、パレットに出した“絵の具の皮”を剥がしてストックするようになりました。この素材を使って人の顔を模したはじめての作品をコンペに出品したら、石原慎太郎さんにご購入いただき、“今はゲテモノかもしれないけど、それがやがてクラシックと呼ばれる作品になるかもしれない”と言われて、この路線の作品を作り続けてみようと思いました。
倉本:色合いが美しくてポップで、何だか欲しくなる感じがありますよね。
杉田:筆を洗うバケツの水って、少しだけ色が入って混ざるととても綺麗だけど、さらに色が混ざると濁ってしまうじゃないですか。そういった濁る/濁らないの境界線を大事にしています。僕はこの絵の具の皮のことを“絵の具のドレス”と呼んでいて、布状にしてカッコ良くキャンバスに着せていくようなイメージがあります。例えば着物の着付けでここはシワをよせたいとか、裏地は派手にして表はシックでという……そんな感覚で作っています。
倉本:今回持ってきていただいた作品は、絵の具の皮の半立体よりもさらに立体的な作品ですね。
杉田:画材ではなくても“アートになる素材”を探していたときに、たまたま歯医者さんが使う紫外線で固まる樹脂素材を見つけました。この作品を一言で言うと、人力のレーザー式3Dプリンターのようなもので、それを右手で樹脂を垂らしながら左手に紫外線ライトを持って、下の方からすこしずつ固めながら作っています。ポロックが“上から”絵の具を垂らしていたのであれば、現代の新しい素材を使うことで“下から”そういった立体作品ができるなという発想です。なのでこの作品は立体ですが、僕としては画家としての活動の延長にあるつもりです。
倉本:杉田さんは筆を洗うバケツやパレットが美しいという前提で話をしていますが、それ自体が普通じゃないから面白いんですね。そういった逆転の発想で表現の追求してきているから、こんなにも魅力的な作品を生み出せるということが分かりました。
杉田:なるほど、それは今言われて、始めて気がつきました(笑)。自分が小さい頃に感じた好奇心を大人の技術を用いて表現しているというのが、僕の作品には共通しているのかもしれないですね。