血統#1
作品概要
- 制作年
- 2014年
- 使用素材
- 和紙、水彩、顔料
- サイズ
- 265mm(幅)×370mm(高さ)
- 特筆事項
- A3額装あり
これやんの作品コメント
STORY
倉本:曄田さんは絵だけでなく字も書かれるんですよね?
曄田:はい、児童小説を描いたりしています。私の出身地である愛媛の宇和島では牛鬼っていう祭りの山車があったり、あとは八ツ鹿踊りがあったりして、そういった祭りの担ぎ手も今は減っているので、それを物語にして人に知ってもらいたいと思って書きました。宇和島は牛鬼がどの玄関にもあったりして、今離れてみるとけっこう特殊な場所で育ったんだなと思います。ですから、今描いているような、ちょっといかつい風貌の顔には馴れ親しんでいました。
倉本:曄田さんの絵には伝統的なモチーフがありますよね。絵を描き始めた時からそういった思いはあったのでしょうか?
曄田:それが全然無かったです。23~24歳までは可愛いガールズイラストを描いていました。でも、作家になるという人生の分岐点に立った時に、一生絵を描くかどうかを考えたら、胸を露わにした可愛い女の子の絵を、還暦を過ぎた自分が書け続けている自信がありませんでした。そこから画風もガラッと変わり、十二神将を作ったり、獅子舞の頭を住吉大社さんで作らせてもらったり。そうしたら、ヤクザ小説の装画を描くことになったり……どんどんハードボイルドな方向にシフトしていきました(笑)。
倉本:獅子や狛犬は先ほど言っていた、愛媛のお祭りなどの昔の記憶からですか?
曄田:狛犬は本当に突然出てきたものなので、説明がしづらいです。狛犬を描くことに関しては、自分のなかで肉付けを続けている最中です。狛犬はインドから大陸を渡って、中国、朝鮮半島を経て日本に入ってきたのですが、その時に日本のお偉いさんが“立派な犬だ”と思い、そういうボタンの掛け違いから獅子が犬になったという話があります。でもそれって、すごく日本的なオリジナリティだと思っています。今は江戸時代の頃のようにいろんな狛犬のフォルムがあるわけではなく、石屋さんにある数パターンのものという程度です。ですから、私はブリーディングする視点で狛犬を描きたいと思っています。
倉本:“狛犬ブリーダー”とは面白い考え方ですね、そんな人と会ったのは、初めてですよ(笑)。
曄田:狛犬を調べながら、いろんな神社に足を運んでいます。日本でも西と東で、あとは時代によっても違いがありますね。江戸より前はすごく素朴で可愛かったりして、江戸時代になるとデザイン性が増した印象もあります。それと同時に狛犬はそのものが、この世のものではないので、私が描くものは神様に“これで正解ですか?”と、お伺いを立てるような作品だと思っています。今日の光だったり、緑だったり、そういったもののほうが、そっちの世界では美しいものではないか、と思ったりもします。