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砂上の楼閣

田羅義史Yoshifumi Tara

作品概要

制作年
2025年
素材
シリカガラス、砂
サイズ
45mm(幅)×135mm(高さ)×55mm(奥行き)
販売価格¥175,000(税込み)
販売応募期間:2025年4月25日〜5月25日まで

これやんの作品コメント

新しい素材をアートとして表現する田羅さん、久々に新作をお持ちいただきました。こちらは数百年前から存在し続ける城を時間のスケールを超越する存在として捉え、透明の砂時計にすることで時間を表現をした作品です。新素材の石英ガラスによって、複雑な装飾を持つ中空素材ながらにシンメトリーの造形として成立させています。ちなみにこちらは「いんすぴ」展Vol.6の制作時に合わせて作った作品。田羅さんの制作テーマだった「ふるさと」にちなんで、幼少期を過ごした場所にある熊本城をモチーフにしています。
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STORY

これやん:「SICF20」では食品をテーマにした作品を展示していましたが、田羅さんの制作の根本となるテーマは何ですか?

田羅:基本的な作品制作の主軸は“日常の再認識と再発見”です。食品をテーマにした作品は「秘密の結晶」というシリーズで、我々が食品を食べるときにパッケージを信頼して中身を見なかったり、ラベルに書かれた食品添加物がどんな成分なのかも知らずに食べている行為を再認識するためのものです。ですから食品の形をそのまま取り出して観察するために、樹脂を直接流し込んで標本にしています。

これやん:食品を標本化することで気が付いたことはありましたか?

田羅:例えば日清食品の「カップヌードル」は麺が容器の底から少しだけ浮かせてあって、熱の伝導率や容器の底に行くにつれて麺がほぐれやすくなるように設計されていました。お湯を入れる前から麺が浮いていて、もちろんお湯を入れたらちゃんと浮くという……そういった流体力学的な視点でパッケージの内部まで設計されている。これは標本にするまでは気づかなかったことですね。

これやん:それは面白いですね。樹脂で固めて取り出してこそ気づくことがあるんですね。

田羅:「サクマドロップス」も樹脂で固めて取り出してみて気づくことがありました。まずドロップは缶の半分くらいしか入っていなくて、何缶も標本化するうちに缶によって入っている色が違うことを知って、茶色と白ばっかりの缶があったり、オレンジが一個も入ってない缶もありました(笑)。どの缶も同じ個数がきっちり入っているものだと思っていたのですが、そんなことはなかったですね。

これやん:標本化する工程はどんな風に進めていくのですか?

田羅:カップ麺はフリーズドライ製法で作られているので、事前の処理などは必要ないです。他のものは色が変色しないように、水分や油分を標本と同じようにアセトンやアルコールで処理してから、まず食品に樹脂を浸透させ、それを抜いた後に封入するための樹脂を流し込みます。チョコレートを放置すると白くなるのは油分が多いからなのですが、グリコの「ジャイアントカプリコーン」などは色が飛びやすいので、防腐も兼ねてアルコールで先に処理をします。それから現状復帰できるように上のところを少しだけ穴を開けておいた封入袋に戻して樹脂を流し込みます。ちなみに選んでいる食品は日常に則しているので、コンビニエンスストアでも売っているものを選んでいます。

これやん:田羅さんは日常にあるものを違う形で見せるという基本のコンセプトがあって、この樹脂標本だけではなく、新しい素材や用いたインスタレーション的な作品もあります。つまりは特に固定した技法が決まっているわけではないんですね。

田羅:そうですね。伝統工芸のような素材や技法にも魅力を感じていますが、新しい視点の提供のために合わせて、どんどん新しい技術や技も作りたいと思っています。