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枠組みの中の器-06

西島雄志Yuji Nishijima

作品概要

制作年
2021年
素材
銅線
サイズ
200mm(幅)×280mm(高さ)×200mm(奥行き)
特筆事項
銅線で出来ているため衝撃に弱く、ちょっとした力加減でも変形することが
ありますので、取り扱いには充分ご注意ください。また、メッキ類を含めて金属は経年で酸化します。発色が鈍くなることもありますので、ご了承ください。

これやんの作品コメント

渦状に巻いた銅線で独創的なフォルムの彫刻作品を生み出すアーティスト、西島雄志さん。こちらは「器シリーズ」の作品で、人のカタチを想起させるような器をモチーフに作られています。2021年に東京都美術館が開催した企画展「体感A4展」に出品された作品で、A4サイズの空間のなかに壺を収めた作品です。渦というごく自然なモチーフを用いながらも、欠けたフォルムで気配を彫刻として表現するという、完成されたコンセプトを持った現代アート作品です。
SOLD OUT

STORY

倉本:西島さんはフォルムが欠けた個性的な彫刻作品を制作しています。そもそもは何を表現しようとしてこういった作品が生まれたのですか?

西島:テーマは人の気配や存在感を表現することです。幼い頃から言語が苦手で、授業でもできるだけ発言をしたくない子供でした。言葉をあまり信用していないというか、例えば言葉を使ってお互いの意思を確認したりしますが、“この人今、嫌な気持ちになっているんだな”って雰囲気で分かったりするように、実は言葉以外にも目に見えないやりとりをしているんです。人を見るときは表情だけではなく、その人の後ろにあるエネルギーのようなものも見ていると思っていて、そういったものを表現しています。今の作風になる前はコンクリートで彫刻作品を作っていましたが、素材自体の存在感が強くて、もっと雰囲気をうまく表現できないかなと考えていました。

倉本:その後に今の作風へとなったのはどんな経緯でしたか?

西島:大学を卒業してからはいろんな仕事と並行してアーティスト活動をしていましたが、仕事場が遠くて週に1~2日しかアトリエでの制作時間が取れず、ストレスを感じていました。もっと自分の生活そのものを制作に落とし込めないかと考えるようになり、ふとしたきっかけで針金を捻ったものをたくさん並べて顔を作ってみたんです。それで針金を捻るだけなら電車の移動中にもできるから、自分が過ごした時間を作品に残せるなと。それで自分をモデルにして、自分の成り立ちをカタチにしようと思い、自分を構成するものとして針金を巻くという、積み重ねた時間を“気配”として表現する今の作風へたどりつきました。この手法を発見したことで制作時間が取れないストレスもなくなり、気分的にもすごく楽になりました。

倉本:大人になってから、針金を巻くという行為がしっくりきたんですね。

西島:渦巻き状に巻いた針金の造形を見た人に“心理学的なモチーフだ”と言われたりもしますが、自分としてはそこまで考えていたわけではなく、編み物をする心情に近かったです。単純作業で手を動かしていると頭がスムーズに動いてくれるので、針金を巻きながら“人が動く仕組み”や、そこから発展して“宇宙の成り立ちについて”など、ミクロとマクロの世界を行ったり来たりしながら思考を深めたりしています。

倉本:フォルムをすべて表現しなくなっていったのは、どういった理由からですか?

西島:これは先ほど話した存在感や気配につながるのですが、輪郭を全部作るとカタチが強すぎてしまって、隙間があるほうが入りやすくてカタチ以外のものを感じやすいんです。例えば僕の鹿の作品を見た人が、たとえ輪郭が欠けていても“鹿だ”と認識してもらえるように、見る人が隙間のイメージを補完することで作品として完成するという。

倉本:西島さんの作品は見る人のイメージに委ねられるというか、鑑賞者がいて作品が完成するんですね。ちなみに作品のフォルムの隙間具合というのは、どんなバランスで作っていくのですか?

西島:例えば馬の作品を作るとしたら、まず空中に自分がイメージする馬のフォルムがあり、それを構成するパーツを作って天井からつるしていきます。最初にアタマを作り、次は関節と……彫刻的に見て“ここがないと成り立たない”部分を作ります。でも、そこがあれば他の部分はある程度抜けても成立するので、次に間を埋めるときに何が欲しいかを考えながら、感覚的には外せるところは外しつつも、これだけあればイメージできるなと感じたところで手を止めます。