ジャクソン・ポロックの新作をつくる
作品概要
- 制作年
- 2011年
- 使用素材
- キャンバス、アクリル絵具、DVD
- サイズ
- 3,850mm(幅)×860mm(高さ)
- 特筆事項
- DVDメディア付属
これやんの作品コメント
STORY
倉本:太田さんの表現はめちゃめちゃおもろいんです。しかも、こんな手法をアートの中でやっている人は稀だし、僕がやっているお笑いの世界に近い感覚なのかなと。でも、作品はとてつもなくアートで、素晴らしいコンセプチュアル・アートだと思っていて。太田さんがやっている、イタコに昔の画家の魂を憑霊させて、絵を描くというコンセプトは何がきっかけで生まれたのですか?
太田:僕はもともと、フェイクの動物に関する博物館を制作していて。例えば、二本足の“半馬”のようなUMAと呼ばれる生物を自分で考えて、それが生きていた証拠を捏造して、博物館を作ったり……。でも、個人で作れるものには限界があると感じていて、それよりも他人を巻き込んで何かを作ったほうが説得力が増すんです。それで、落語家さんに頼んで半馬が出てくる落語を作ってもらって、それを博物館の中に展示するということを、大学生の頃にやったのがはじまりでした。
倉本:無いものをいかに有るかのようにして、ファンタジーをリアルにするという作業を学生の頃からやっていたんですね。
太田:そうです。自分の手だけで作るものって、自分の中で収まってしまうというか、完成が見えちゃうのであんまり面白くなくて。それでイタコさんを使わせてもらいました。僕にとってはコントロールできないままに出来上がるというのが面白いし、自分が制作のテーマに“嘘”を含んでいるので、イタコさんに作らせたら嘘か本当か分からないじゃないですか。ということで僕が人づてでどうにか見つけることができた方にお願いしました。
倉本:この「新作をつくる」作品を完成させるまでの道筋はどうやって立てていったんですか?
太田:お願いするときに、この人を降霊してもらったまま絵を描き、映像も撮るというのは事前に言いました。なぜなら急に断られたら困るからです。うそか本当かわからないですけど、ご本人が画家を調べることも可能といえば可能なんですよ。調べて、こういう形なのかっていうことがわかってやっている可能性も、もしかしたらあるかもしれない。あとはインタビューをして、その後でこちらで用意しておいたキャンバスと絵の具を使ってもらい、こちらとしては映像を回していただけで、何の指示もしていません。絵の完成もイタコさんが絵の具を使い切ったところで終わりという。だから僕は、途中で何の指示も出していないんです。
倉本:太田さんはまったくコントロールしてないんや! それでこんなにも偉大な故人の新作っぽく見えてしまうという。もしかしたらもっとチープなもので終わる確率もあるはずなのに、ここまで徹底してやれるっていうのは、やっぱり見えない力が働いているっていうふうに、思わざるを得ないですよ。
太田:もちろん僕のなかで、この人の作品ならイタコさんでも“描けるだろう”っていう算段はあります。つまり、技巧的でなくて短い時間で描けるものであること。やっぱり本物とは違うんですが、それは自分の想像をはみ出ているから面白いわけで。そうやって、見ている人の価値観を揺さぶりたいという思いを作品化していて。僕自身、ミステリー的なものを信じているわけではないのですが、こういった切り口って、一般の人が見ても面白いじゃないですか? そういうものが僕は好きなんですよね。