JOKER
作品概要
- 制作年
- 2020年
- 使用素材
- PET、card
- サイズ
- 190mm(幅)×240mm(高さ)×90mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:松枝さんの作品を最初に観たときにすごくキャッチーで分かりやすくて、面白いという印象を受けました。まるで見てみたいと思っていたイメージをリアルに見させてもらったというか。こういう作風に行き着くにはどんな経緯があったのですか?
松枝:実家が印刷会社を営んでいて、幼い頃から文字やグラフィックなどに触れていました。その後、藝大のデザイン科で平面の表現も学びながら、立体造形物を作るようになったのですが、彫刻家を目指している人には全然敵わないと思うところもあって、平面の良さと立体の面白さが混ざったものができないかと、模索していました。それとは別に透明なカップを作る素材や製造工程を勉強していて、たまたまロケットの先端のようなカタチのパーツを作ったときに、プラスチックを押し当てていた型がくっついてきて、型が本来ある場所から逃げ出しているように見えたんです。それを発見したときに“これは何か面白いものができるぞと思いました。それでトランプのマークをこのやり方で立体化した作品をいろんな人に見せたら、“見たことがないし、面白いね”って言われて。そこからこの表現方法でいろんな作品を作るようになりました。ちょうど26歳の頃です。
倉本:平面と立体を交差させて松枝さんの作品は生まれたとは、面白いエピソードやなぁ、それをどんどんと進化させていったわけですね。
松枝:それともうひとつ“エスケープ”というテーマもありました。ちょうどその頃、進路に迷っていた時期で作家としてやっていくプレッシャーもあって、何もかもやめて逃げ出したいという気持ちもあって……。
倉本:逃げたかったんや(笑)。では、松枝さんの作品たちは自身が反映されているってことやね。
松枝:本当にそうです。それと、あとは“やっちゃっていいんだ”ってことかな。周りの目を気にせずにやってみたら意外と面白かったってことはあると思うし。その辺は作品からも感じとってほしいですね。
倉本:すごくポップな作品だけど、実際に作るのがとても難しいんですよね? 失敗も多くあると聞いています。
松枝:ヒートプレスといって透明の板に熱をかけ、自分の手で中に収めるものでグッと押しあてています。そのときにちょっとでも傷が入っても、熱で素材が泡だってしまってもダメです。手作業で作ってはいますが、手作り感のない工業製品のような仕上がりを目指していて、透明の素材ということもあり、指紋ひとつがついても終わりなので、手の油分を完全に除去して作業しています。だいたい10回やって、1回成功するくらいの割合ですね。
倉本:え、そんなに? 見た目はポップな量産品のようなのに、ガチの職人技が生みだしてるんや。その話を聞いて、もっとこの作品が欲しくなりました。