Reflection_Botaurus
作品概要
- 制作年
- 2015年
- 使用素材
- Bone、Silver、Resin
- サイズ
- 170mm(幅)×460mm(高さ)×240mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:骨格を用いた高石さんの立体作品“Reflection”を初めて見たとき、“どうやって作ってんのかな?”って思ったのと同時に、その表現の斬新さに感心しました。この表現方法が生まれた背景について教えてください。
高石:もともと工芸品のように日常的に使われるものや、機能性がある美しさが好きで、高校の頃から陶芸をやっていました。ただ、進学先の多摩美術大学・工芸学科の陶は器ではなくてオブジェ制作がテーマだったので、これは違うと思ってガラスに行ったんです。それと建築をやってみたい気持ちもあって、大学4年の時に愛知トリエンナーレと瀬戸内芸術祭に行ってアートのための建築物を見たり、街のなかにアートが入り込んでいるのを見て、それまで無意味だと思っていた機能性を持たないアートのことが大好きになって作家を目指すようになり、名和晃平さんのところでお世話になりました。
倉本:名和さんのところにいたんですか。彼もアートと建築をやっているし、高石さんとは作風もつながる部分があるね。
高石:そうなんです。名和さんはガラスも使われているし、僕も昔から動物の骨が好きで学生の頃から集めたりしていました。それで名和さんの拠点である京都から東京へ戻ってきたときにシェア・アトリエを作って、この骨格を用いた作品を作りはじめました。これは記憶のカタチがテーマになっていて、生き物が持つDNAや記憶が死んだ後に残るものっていうのが骨であって……。
倉本:そんな骨に対して、どういうアプローチを取ろうと?
高石:僕たちは作品を作る前に、デジタルでシミュレーションをするのですが、3Dエフェクトで“リフレクション”と言う技術があって、コンピューター上だとミラー=100%反射できるので、永遠に物を連続できるんです。これをリアルな立体物で作れないかと思ったのがきっかけでした。最近の銀鏡塗装という技術だと99%位まで反射させることができ、本物の骨にこの塗装を施して鏡面化することで、その場から作品の存在そのものを消せないかなと思い、“Reflection”を作り始めました。
倉本:生き物の記憶が死んでも残るものが骨なのに、それさえも消したいんや! 面白い発想やなぁ。でも、作品として見たときにカッコイイものになっていますね。
高石:そう、本当にかっこいいんですよ、骨格標本って。コンセプトもすごく大事ですが、表現的に組み合わさったときに綺麗に見えたり、カッコ良く見えるかどうかが、作品として一番強いことだと思っています。でもそこが難しくて、同じことを求めてもカッコ良いと思えないものもけっこうあって。この骨格表現でも完全に銀だけを使うと、どこかプラスチック感が出てしまいます。本来、反射率だけを求めるならそうしたいのですが、くすませたり腐食させることでビジュアル的にもカッコ良くて、コンセプトにも合ったバランスを探っています。
倉本:ちなみに骨を空間表現のなかからも消したいと思う先に、どんな欲求があるのですか?
高石:やはり人が見るものなので、人が見たときにどう感じるかに興味があります。この骨格標本もそのためのひとつの表現で、これを標本と認識している人と、していない人が同じ状況に置かれたときに起こる、感覚の違いを見たいという欲求がありますね。