Snake Watch
作品概要
- 制作年
- 2017年
- 使用素材
- ケント紙、顔料インク
- サイズ
- 250mm(幅)×302mm(高さ)×30mm(奥行き)
倉本美津留のこれやんコメント
STORY
倉本:okudaさんは京森康平さんと同じファンション学校ISTITUTO MARANGONIを卒業して、今は同じアトリエでアーティストとして活動しているという、ものすごいシンクロ感ですね。
okuda:ISTITUTO MARANGONIはほとんど日本人がいない学校で、しかもそこを卒業したのちにファッションじゃなくてお互いにアートをやっているというのはすごい偶然でした。京森さんと僕はコンセプトも緻密な表現で近いのですが、僕は基本的にモノクロで彼はすごくカラフルな作品を作っているというのも面白いなと思います。
倉本:この細かい画風はどうやって生み出されたのですか?
okuda:これは自分の性格から出てきたものだと思います。技術というよりもシンプルにペンで描くだけで難しいことは特にしていません。どこがスゴイかというと、この画は一枚を描き上げるのにすごく時間がかかるので、ずっと続けられる集中力というか、集中状態を切らさずに分散し、持続させられることだと思っています。でも最近は持久走だけではなくて短距離も必要だと感じています。ちなみに使っているのは0.03ミリの製図ペンです。
倉本:それはファッションの仕事をしていた時に使っていたペンですか?
okuda:そうです。まさに仕事の合間に手近なもので描き始めたんです。最初は人に見せるために描いていたわけではなく、デザイナーの仕事をしながら単純にストレス発散のために描いていました。
倉本:それが作家の道へと至ったのは?
okuda:やっぱりデザイナーってカッコつける職種だと思っていて、どう見られるかをあらかじめ分かったうえで物を作ったりするんですよ。でも、その反面僕にとっての作画は自分をデトックスする行為なので、その画を人に見せるのがまるで裸の自分を見られる気がして恥ずかしかったです。でも、描き続けるうちに人に“いいね”と言われ、素のままの自分が素敵だと思ってもらいたくなって……この表現方法が自分にとって裸でいられる手段だと分かってしまった以上は、もうデザイナーには戻れないと感じて、作家として活動するようになりました。
倉本:画を描きはじめたことがきっかけで、価値観がまるで変わったのですね。
okuda:はい、そうは言ってもまだ裸になりきれない自分もいて、今はそこが課題でもあります。最初の頃はアタマにあるイメージをそのまま再現するためにスケッチも精巧にやって、100%再現できるようになる過程を楽しんでいました。でも、それができるようになったら、今度は設計図を打ち破る偶然の必要性を感じるようになりました。今はラフに描くことで生まれる絵の具の滲みを用いて、そこにこれまでの細密な描き込みを加えたりしています。