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いんすぴ展 アーカイブ企画 #2 「おてんとうさま」

日本語×現代アートの企画展「いんすぴ」展Vol.6はゴールデンウィークもパークホテル東京にて開催しています! この記事では過去のいんすぴ展の作品を取り上げて、この企画の面白さを掘り下げます。

いんすぴ展は毎年、アーティストにそれぞれのことばをテーマに作品を制作してもらいます。テーマの言葉は毎年新しいものに入れ替えず、毎年同じものを用いています。そのため同じテーマで制作された作品も多く存在します。この記事では過去に同じテーマで制作された作品を紹介します。

初夏のこの時期になると存在感を強く感じるようになる、このテーマで制作された、過去のいんすぴの作品をご紹介します。

 

「おてんとうさま」

【作者コメント】

僕の展覧会のテーマが“日差しの記憶”なんです。 若い時はだいたい暑いほど良くて、そういうところばかりに旅をしていました。「おてんとうさま」という言葉を聞いてすぐに、インドネシアやカリブ海の太陽が浮かび、ほとんど何も考えずに描きました。「おてんとうさま」という言葉には、和風な物語性がありますが、僕はそういう和風さが苦手でイメージも湧かないから、迷わずに自分なりの“日差しと影”っていう「おてんとうさま」にしちゃった。太陽って絵にしにくいんです。あまり強い日差しには描かなかったから、ポイントで少し入れてみました。まあ、僕にとっては「おてんとうさま」=影なんですけどね。

 

 


 

【作者コメント】

「おてんとうさま」は明るいテーマだなと思いました。そのまま太陽のイメージで、太陽そのものを彫刻化できないかと考えました。太陽のコロナ、太陽の模様を表したいなぁと。固体と液体の間の温度を保ちつつ、ゆっくりとジェルワックスを溶かす。それによって色が混ざらずに柄が出るので、太陽の模様を再現するのに、丁度よくやるのは面白かったです。作品は重ねあわせたレイヤー状で、色が混ざり合わず、深みのある距離感を感じられるものです。実験のように作っていく作品が好きですね。作品を作る時に近くでみることを重要視しているので、遠くから見るのと近くから見た造形の繊細さを、みて感じてもらいたいです。

 

 


 

【作者コメント】

「おてんとうさま」って、みんなの心にあるけど見えない、神様みたいなもの。それを表現できればと思ったんですが、太陽をそのまま描いてもなぁと。どういう表現にするか、どういう素材にするか、どういうところに設定するか、すごくむずかしかったです。
スタイルは点描です。このブラック・シリーズは光と影が作品のキモで、太陽も夜があれば昼もあるから、リンクできるだろうなというイメージはありましたが、それ以外のところをどうすればいいのかと悩みました。
太陽のまわりに放射線をつけていく、ぐるぐる渦巻き状になっていく、っていうところだけは決まっていました。文字がいるのかいらないのかも悩みましたが、コロナ禍でどんどん変わっていく社会の中でも、太陽は普遍的に存在する。それを描いていたら、幸せになったんですよね。そういう言葉を絵の中に入れても、楽しくなればいいのかなあって思っています。
光で見え方が変わる作品なので、真正面から見るだけじゃなく、いろんな角度だったり、いろんな光の中で見てほしいです。

 

 


 

【作者コメント】

「おてんとうさま」は聞きなじみのある言葉でした。そのなかで“自分にとってのリアリティのあるおてんとうさまって何かな?”と、考えていたところ、昔から“おてんとうさまが見てるよ”という意識があったことを思い出しました。見られている感覚、遠くから自分のことを自分が見ているという装置として、望遠鏡を作ってみました。
ひとつひとつ、パーツの型を作り、ガラスを流して接着して最後に目を入れました。写実的ではないシンプルな目を入れることで、向こうから見られている感覚を出しました。ガラスの水平をだして3つの点で接着するのはかなり緻密な作業でした。レンズのところよく見ると実際にガラスの溶けている模様が見えるようになっています。“見られている”という点で作品に目があるので実際に覗いてみてほしいです。

 

 


 

【作者コメント】

「おてんとうさま」は神様の感じもありますが、私は農業をやるのに必要なものだなと思いました。小さい頃におてんとうさまが見ているよと言われたりしたので、私は前向きな言葉のイメージを持っています。
空にある「おてんとうさま」はすぐに思いつき、もう一捻りして“おてんとうさま”と”お弁当様”といった感じに言葉をかけてみました。お弁当に「おてんとうさま」を入れたいと思い、どちらのお弁当にも「おてんとうさま」を入れ込みました。
女の子2人の構図を思いつき、お弁当もサンドイッチに「おてんとうさま」をはさみました。ちょうど春の頃、ピクニックのイメージです。
普段は絵も描きますが、お人形も作っているので、可愛らしさを感じてもらえるとうれしいです。

 

 


 

【作者コメント】

植物が好きで、家で育てているのですが、お日様があることで育ち方の変化するので、それを取り入れて「おてんとうさま」は明るい絵にしようと思いました。作品に出てくる植物は雑草ですが、写真を撮って、いままで使ったモチーフの靴と組み合わせることで今回の作品を作りました。
シュールななかにも、脱ぎっぱなしの靴や勝手に生えてくる植物のプロセスに、違いはあまりないということを感じてほしいです。植物も靴も素材をそのまま写真に撮って、切って、貼っています。初めは植木鉢も写真にしたのですが、グラデーションをつけたくて背景と同じように塗ることにしました。ほかにも筆での表現をしてみたいと思い、クリアのジェルで光沢・立体感を出しました。雑草が朝露に濡れたようで、明るい感じになったと思います。

 

 


 

【作者コメント】

「おてんとうさま」と聞いてはじめに思いついたのは、太陽とお日様です。一つは幼い時に祖母に“お天道様が見ているから、悪いことをしたらいかんよ”。食べ物の時には“お天道様が見ているから、粗末したらいかんよ”と言われたことを思い出しました。お天道様を調べていくと“天道”という漢字で表していて、天体が動く道だったり、人間の力が及ばないことだったり、という意味でした。太陽の下にあるものは生きていくことができますし、目に見えない存在、先祖のような意味合いも感じて、そういったことに感謝していきたいなと思いました。これは自宅に咲いているコデマリです。太陽の恩恵を受けて生きている姿をコデマリに託しました。太陽の温かさや恵みを金箔に込めて表現しました。

 

 


 

 

いかがでしたか? 今回紹介したテーマの「おてんとうさま」は、古来より太陽を敬い親うという意味ですが、具象的なイメージを持ちやすい言葉だと思います。それでもアーティストは太陽と自身の記憶を重ねたり、太陽の恩恵を受ける対象を描いたり、または太陽そのものを独自の技法で表現したりと、多様な解釈や表現でアート作品を生み出しています。

現在開催中のいんすぴ展では前期の作品で「おてんとうさま」をテーマにした作品があります。下記の前期特設サイトよりご覧いただけます。いんすぴ展はゴールデンウィークまでパークホテル東京にて開催中です。ぜひリアルな作品たちを見にいらしてください。

 

 

「いんすぴ」これやん展Vol.6 後期

会期:4月6日(日)〜5月8日(木)
会場:パークホテル東京Corridor Gallery 34
開催時間 11:00〜17:00(入場無料)

いんすぴ後期特設サイト
前期特設サイト

 

 

文:これやん編集部(2025年4月25日)

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