芙蓉の部屋
作品概要
- 制作年
- 2021年
- 素材
- 和紙、岩絵具、水干絵の具、雲母、墨
- サイズ
- 140mm(幅)×180mm(高さ)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:飯田さんが絵の世界を目指したきっかけは何でしたか?
飯田:三つのきっかけがありました。小学校1年生の頃“その辺に生えている野花を描いてみよう”という授業があって、それが楽しかったのがきっかけでお絵かきばかりをするようになりました。その姿を見た親が、近所のお絵かき教室に通わせてくれました。その先生は多摩美術大学の日本画コースを卒業し、作家活動を並行して教室をやっていて、私と妹はたまたま最初の生徒でした。最後の3つめが一番のきっかけになったのですが、高校生の頃までずっと絵を描き続けていたので、本当に絵が好きなのか生活習慣なのか分からなくなってしまったことがあり、一度運動部に入ってみたんです。そうしたら絵をかけないことがフラストレーションになってしまって。それでり美大に行こうと決意しました。
倉本:それがお絵かき教室の先生と同じ、多摩美術大学になったわけですね。
飯田:物を見ながら描く人は日本画を専攻する人が多かったので、私も日本画かなと。それと、先生の個展に行ったとき絵の具の質感がすごく綺麗で憧れていたのもあります。
倉本:自身の表現技法やスタイルはどのように培っていったのですか?
飯田:大学では基礎だけ勉強したら、あとは好きにどうぞという感じでした。なので大きい作品を描きながら実験することで、自分のスタイルが固まっていくことが多かったですね。最近だと、2017年に7メートルくらいの大きさの作品を描きましたが、その制作期間の途中にフランスに行って、現地で抽象画を見たときに輪郭を描かずに絵の具のタッチだけで見せるって、こんなにもかっこいいんだと気がつきました。日本でも見ていたのですが、現地の文化と地続きになった作品を見ることで腑に落ちました。
倉本:腑に落ちたとは、どんな部分でそう感じましたか?
飯田:まず、樹形が違うんですよね。本で見ていたあの優美な木の形って実際にあるものなんだなと思いました。季節は秋でしたが、日本とは光の色が全然ちがって白っぽくて、それであのモノトーンでおしゃれな色合いが生まれたんだなと。そうやって西洋画の見方自体が変わったのが大きかったです。その経験で自分のなかでひとつ常識が外れたというか、もっと表現を揺らして描いてもいいんだなと思うようになりました。それで、日本に帰ってきたら筆で絵の具を飛ばしたり、ローラーで塗ってみたりして……日本画の画材は乾くのに時間がかかるので相性は悪いんですけど、やってみたら意外と綺麗だったりしました。
倉本:モチーフは写実的なようでもあり印象的にも捉えられる不思議な感覚があります。
飯田:ちゃんと取材して描きたいと思っているので、いろんな場所で取材したものを組み合わせながら再構成するように描いています。写実的に描くかどうかは絵のサイズによって、大きいサイズでしっかり描きたいときは写実的に描きますし、今回のように小さくサイズだと平面的にしたり、あとは模様化して描くこともあります。基本的には見たことのない風景を、実際にあるものを自分が吸収しながら作り出していくのが作品のコンセプトなので、自分の想像さえも超えていけないかなと思いながら描いています。