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はっけよい

木村浩之Hiroyuki Kimura

作品概要

制作年
2018年
素材
雁皮紙、墨、アクリル
サイズ
455mm(幅)×360mm(高さ)

倉本美津留のこれやんコメント

墨絵は木村さんにとって、力士の動きを表現するシリーズで、貴ノ花利彰が投げられた瞬間を描いた作品。髷から順に一筆書きで描かれていますが、このモチーフをもとに木村さんはスウェーデンで巨大壁面のライブペインティングを行っていて、百枚ほど描き続けることで筆の動きを身体にたたき込んで表現したと言います。墨の筆致が力士の躍動感を巧みを捉えていて、無二の臨場感を持った力作です。
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STORY

倉本:木村さんは相撲にまつわる絵を描き続けていますが、そのきっかけは何でしたか?

木村:大学で日本画を専攻したときに、伝統的なモチーフよりもシンプルに自分が好きなものを描きたいと思い、プロレスを中心を描いていました。卒業する頃にもう少し日本的文化のあるモチーフを描きたくなり、そのなかでも肉体をともなった動きのあるものが良いなと思って、自然と幼い頃から好きだった相撲へ辿り着きました。自分の作品を世界に発信していくうえでも、日本的なルーツを持っている相撲はモチーフとしても分かりやすいですから。

倉本:どのように力士を描きはじめたのですか?

木村:いろんな相撲部屋を回り、受け入れてくれそうな部屋に足繁に通いました。電車に乗って部屋へ行き、朝稽古を二時間ずっと描かせてもらうという日々を過ごしました。朝稽古は基本的に動きっぱなしで、力士の動きがとても早いんです。最初のうちはその瞬間の動きを描こうとしても、上半身の途中までしか描けずに終わっていました。それでも毎日、力士を見ながら墨筆を動かすことで、手が組み手や動きを覚え、その瞬間を見て全身を描けるようになりました。

倉本:稽古を描くのも修練の賜物なんですね。普通なら写真を撮ってあとから描こうと思うところを、その瞬間に向き合って捉えにいったという。

木村:それができるようになったのは単純に描いた枚数です。これまで朝稽古で描いた半紙は全部とってありますが、二万枚を超えていました。そのおかげで、自分の絵は人の身体の動きを表す描写に特化できたと思っています。でも、そのうちに描くだけでは物足らなくなり、“自分も(相撲を)やらせてくれ”となって、朝稽古に参加するようになりました。それから相撲クラブに入門し……今ではどちらかというと、人に相撲を教える立場にあります(笑)。

倉本:(笑)。本当に相撲一筋な木村さんですが、改めて相撲の魅力をどこに感じますか?

木村:相撲を取る人と近くで接していると、彼らは毎日地味な稽古をくりかえして身体を鍛え、作り上げていることが分かります。身体は1~2年でできるものではなく、7~8年……と、時間をかけて肉体を作り上げる過程が面白いんです。もちろん、その境地まで達しない力士もいるなかで、そこまで辿り着いた力士には圧倒的に輝く瞬間があります。そういう力士を間近で見たときは感動しますね。

倉本:木村さんの作品には、力士の組み手のしなやかさが表現されていますね。

木村:力士の組み手は普段の私達の生活のなかにはあり得ない動きがあって、そこは描くうえでの面白さを感じるところです。力士を描き続けていてもマンネリにならず次に繋がるというか、常に新しい展開を自分のなかで生み出せているというのも、相撲文化の奥深さなのだと実感しています。