僕が九十九神をテーマに作っている「帰港」というシリーズがあり、これは沈没船が九十九神となって港に帰っていくというもので、「おかえり」という言葉にふさわしいと思いました。「おかえり」は「ただいま」に対する返事で、待っている人がいる、迎え入れる場所があるイメージなので、救いのある言葉だと思います。基本的に言葉よりモノが先にあって、古い道具からインスピレーションを受けて作ることが多いですが、「帰港」は自分の名前の勇魚（いさな＝クジラのこと）と九十九神を結びつける試みだったので、言葉に近いのかもしれません。最終的な表現がモノの形に左右されたこれまでとは違って、最初にクジラがありきでそこから素材を考えていったので、逆のプロセスになっていますね。