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Play time

安西泉Izumi Anzai

作品概要

制作年
2018年
エディション
1/4
使用素材
エッチング、水彩、雁皮紙、ハーネミューレ紙
サイズ
90mm(幅)×120mm(高さ)/イメージサイズ
220mm(幅)×275mm(高さ)/額込み
特筆事項
クロキツネザル。オスは全身が黒い体毛で被われている。メスは全身が 乾色の体毛で被われ、耳の房毛が白色。休むときはいつも一緒。
販売価格¥44,000(税込み)

倉本美津留のこれやんコメント

想像ではなくて、写実の究極のような表現。それでいて、写実したい対象物が希少種だったりすると、リアルなものが消えたときの危うい感じもある。それを踏まえて描く対象を選び、かつその理由もあるという、コンセプチュアルで面白い作品。「クロキツネザル」は安西さんが動物園に行って描いたもので、時間をかけるからこそ、ここまでリアルに表現できるんやね。
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STORY

倉本:安西さんの作品を見ていると、まるで動物の生態まで把握したようなリアリティを感じます。科学雑誌「ニュートン」の専属イラストレーターをしていた時期もあったんですよね。

安西:はい、もともと図鑑が好きだったので、夢が叶ったと思いました。ニュートンは専門の学者さんの校閲が入るので、例えば恐竜だったら“足の指の第一関節の長さが違う”という指摘が入って、修正して……というやりとりを100回以上重ねて描きあげます。それによって空想ではなくて、現時点でのリアルな恐竜が描けるので、それが私には嬉しかったです。

倉本:それでこんなにリアリティを持たせられるんや。ある意味、安西さんは動物の造形に最も詳しい人でもあるんやね。それで、現在の銅版技法というスタイルに行きついたのは?

安西:もともと版画に興味があり、学生時代はリトグラフを専攻していました。銅版よりも細かい描写に長けたリトグラフですが、学生の頃はCGを使用してさらに細密な描写方法を研究していました。そんな学生時代から原点回帰して自分の手仕事で描きたいと思ったのが、銅版をはじめたきっかけです。それに、私が子供の頃から好きな図鑑って、昔は銅版を刷って作られていて、それを今の時代にやりたくて。

倉本:本当に好きなことが、そのまま続いているんやね。このPlay timeシリーズは、これが銅版画なんだと驚いてしまいます。銅の板にこの細かい線を描いていくわけですよね? いや、描いたというかまるで写真のように感じます。

安西:Play timeは基本的には絶滅危惧種や新種ばかりを描いていて、数が少ない動物なので刷る枚数も少なくしています。このシリーズは、江戸時代に“トラやゾウやクジラがきた”って大騒ぎになったのと同じで、私も初めて見る動物を見て大騒ぎして、“この品種の動物、知ってる?”という投げかけでもあります。作品を見たみなさんにも、自然の造形や不思議さに右往左往してほしいと思っています。「クロキツネザル」は、黒いほうが雄でオレンジが雌。図鑑のように雄と雌のペアで載せて、しかも性別で色が違うところを見せたかったので着色しました。クロキツネザルはたまたま動物園に行ったときに、すごく尻尾が長くてフサフサした子がいて“これは面白いなぁ”って思って、半日間くらいずっと観察していたら仲良くなれて、ガラス越しにタッチしてくれました(笑)

倉本:そこまで時間をかけて作品化しているから、こんなにもリアルなんや。でも、木はサラっと描いているよね。背景もないし、動物だけを描きたいってことがそこからも伝わってくる。

安西:たまに小道具的な表現として木や地面が出てくるときがあるんですが、アウトラインだけです(笑)。やっぱり動物を見てもらいたいので、そこは最低限でいいかなって。

倉本:話を聞くと、実はすごくコンセプチュアルなんですね。

安西:レンブラントの銅版がまだ展示されているように、銅版は丈夫で100~200年という年月でも保存できます。ですから今、新種と呼ばれている動物たちが100年後には繁栄しているのか、もしくは絶滅してしまっているかを含めて、この時間を残しておきたいです。

倉本:だから銅版なんですね。