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Parasitology of Qualia

松村 淳Jun Matsumura

作品概要

制作年
2022年
素材
磁土
サイズ
113mm(幅)×860mm(高さ)×62mm(奥行き)
販売価格¥(税込み)

これやんの作品コメント

磁土を用いて無二な造形物を生み出すアーティスト、松村淳さんが初登場です。こちらは鋭角的なシェイプの作品で、壁に掛けて飾ることができます。陶土を伸ばしながら造形して削り、さらに土をのせて削るという二重構造になっています。鋭角的でありながらも、なめらかな流線型のカーブで構成されていて、一見したときの違和感と美しさが同居した、力強い作品です。
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STORY

倉本:陶芸を始めたきっかけから教えてもらえますか?

松村:もともとモノを作ったり絵を描いたりするのが好きでした。でも、それだけでは食べていけないと思い、アメリカの大学で海洋生物学を勉強しました。その頃ホームシックになり、日本の文化や工芸がとても魅力的に見えて、憧れを抱くようになったんです。それで日本に戻り、たまたま手にした器の雑誌で、多治見市にある陶器意匠研究所の生徒募集を見つけ、とりあえず陶芸を始めてみようと入所しました。最初は昔ながらの器とか土っぽいものの良さがなかなか理解できませんでした。

倉本:その間に自分の作風とか作りたいものが浮かんできたわけですか。

松村:その頃はイギリスの女流陶芸家、ルーシー・リーが好きだったので、彼女のような作品を作りながら器作家を目指していました。でも、やっていくうちに、たくさん作って売るというサイクルの速さに違和感を覚え、もっと作品に時間をかけたいと思うようになったんです。作品を削ったり、やすったりすれば、もっと時間をかけられるし、そうすることで自分らしさが出てくることに気がついて。それで同じものを作るというやり方をやめ、時間をかけてオブジェ的な作品に挑戦しました。それが今の作風につながっています。

倉本:そこから今の尖った、鋭いフォルムが生まれたのですね。

松村:鋭角なフォルムになったのは、カップを作っていたときにたまたま両端を引き延ばしていったら、気持ちよかったという体験が大きかったです。それでどんどん引きのばして、削っていって、今のような鋭利な形になっていきました。それと自分が学んでいた生物学からの影響もあります。イルカを専攻していたので、流線的なものを作るとき、カーブは幾何学的に見ても、自分が納得がいくようにしたいんです。生き物には伸びる方向があり、その先に先端があるので、尖ったカタチが自分にはしっくりきたんだと思います。カップのようにスパッと切れた生き物は存在しませんから。そうは言っても、陶芸的には尖っていると割れてしまうので、先生によく止められていました。でも、そういったアドバイスにあまり従わずに、それを続けることで今に至っています(笑)。

倉本:作品はもちろん、性格も少し尖っていたのですね(笑)。松村さんの作品を見たときに、一体これは何だろうという衝撃を受けます。どんなイメージで創作を始めるのですか?

松村:白磁のオブジェの作品は、自由に削り出しながら作っています。もともと手で模った形を削っていくという工程自体が、僕にとってはタイムマシンのような感覚なんですよね。そうやって自分が作った軌跡を辿りながら模っています。蓋が付いた作品は茶器の水差しです。茶道の道具には制約が多く、水差しを水を入れるものとして機能するという縛りがありますが、そこに好きなようにやりたいことを入れ込みながら、自分の形にしていくように心がけています。茶器の作品タイトルは生物学の用語から付けていて、「ネクローシス」は(茶道の本質から外れた)外的な要因による細胞死のこと、他にも「アポトーシス」というのは、細胞が組織を良い状態に保つために自動的に死ぬプログラムのことで、密かに茶道のやや形骸化した部分へのアンチテーゼの意味を含ませています。