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おばけのプラクティス#45

大渕花波Kanami Obuchi

作品概要

制作年
2023年
素材
額縁、綿布にアクリル、ハトメ
サイズ
300mm(幅)×300mm(高さ)×50mm(奥行き)
特筆事項
展示方法は壁面に釘打ち(展示指示書付き)。ご希望の方には、白色のバックパネルをお付けいたします(バックパネル代:3500円)。
販売価格¥63,800(税込み)

倉本美津留のこれやんコメント

額縁を主役にした個性的な作品を作るアーティスト、大渕花波さんが初登場です。「おばけのプラクティス」は、鑑賞者の記憶に残りづらい“額縁”を“おばけ”に例え、額と絵画の関係を逆転する大渕さんのシリーズのひとつです。この作品はヨハネス・フェルメールの名画「レースを編む女」をモチーフにしています。フェルメールの特性を捉えた見事な模写の表現力に加えて、額が主役になるという逆転の関係性を持ったコンセプトが、強烈なインパクトを放っています。“こんなアプローチがあるとは!”と、見る人を驚かせてくれる、素晴らしいアート作品です。
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STORY

倉本:大渕さんは絵画の額縁にフォーカスするという、個性豊かな作品を作っていますね。子供の頃から絵が好きだったのですか?

大渕:はい。幼稚園の卒業アルバムの表紙を私が描くことになったのですが、そのとき『ハム太郎』にハマっていたので、ハム太郎が寝ているシーンを描こうと思ったんです。そんなハム太郎の姿は見たことがなかったのですが、それを表紙にしたら面白いだろうと思って、それが私の中で絵の人生を歩むきっかけになりました。

倉本:想像したものを描こうとしたわけですね?

大渕:今の自分がこんな作品を作っているのも、やっぱり見たいものを見たいからなんです。学生時代に油画を専攻したのも、その作品がある景色が見たいからでした。当時の私は、権威や権力とは真逆の概念的な抽象画を描いていましたが、大学院のときに他学科の授業で“絵画学科は評価される土台があるが、他学科出身で絵画を描いている人はコンペで落とされることもある”と言われて……。恥ずかしい話ですが、そこではじめて自分がいた絵画学科は、評価される権威的、権力的な土台のようなものがあることを知りました。それがきっかけで、無邪気に抽象画を描いていたら、知らない自分が避けていた権威を振りかざすようになってしまうんじゃないか? と、考えるようになりました。

倉本:そこからどうやって、今の額縁が中心となるような作品へとたどりついたのですか?

大渕:学生時代に美術館で監視のアルバイトをしたのがきっかけでした。働いていた美術館は所蔵作品が少なく、海外から作品を借りて企画展を開催していました。その際、額縁は基本的に海外の美術館のものでなく、日本の美術館が誂えた仮の額なんです。だからなのか、図録には額がトリミングされて載っていない、ということもありました。それで、絵が返却されたらこの額縁はどうなるんだろう、人々の記憶に残るかどうかも怪しいし……と気になっていました。その経験から額を真ん中に置いてそのまわりに絵を誂えて、額縁みたいに装飾してしまおうと思いつきました。でも、真ん中がなかったら絵としておかしいし、額縁の集合体だけでは成り立たないので、両者を今の作品のような形にすれば、トリミングされることはないと思って作りました。

倉本:描写のテクニックがないと、こんなにちゃんと模写はできないですよね。模写が見事なほど、コンセプトの意味も引き立つと思います。

大渕:だから、頑張らないといけないですね! 最初の頃は下手で“名画の版画にすれば?”とも言われましたが、それは違うなと思って。額縁も作った人がいて、それと同じように額縁を装飾するために絵を描くという、プロセスが大事だと思っています。絵を切ってしまう表現はあまりリスペクトがないと思われるかもしれませんが、時間をかけて全部自分でちゃんと描くことで、リスペクトを表わしているつもりです。トリミングにもこだわって描いています。まず、額を四角い形にして写真を撮って、パソコンでいろんな絵画と合成しながら、合う合わないを決めていきます。

倉本:大渕さんにとって、額縁の魅力とは何ですか?

大渕:やっぱり額縁がないと、昔の名画って魔法が解けちゃうじゃないですか。どっちが欠けてもダメなんです。絵画にとってなくてはならないものなのに、不憫な扱いを受けているってところに惹かれますね。