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膨よか

谷中美佳子Mikako Yanaka

作品概要

制作年
2020年
使用素材
鳥の子紙、墨、雲母胡粉、天然岩絵具、植物染料
サイズ
150mm(幅)×360mm(高さ)×15mm(奥行き)
特筆事項
自然由来の絵画材料を使用しているため、明るさにより見え方が変化します。直射日光を避けてお楽しみください。
販売価格¥(税込み)

これやんの作品コメント

日本画の伝統的な画材・技法を用いて、印象的な植物を描く谷中美佳子さん。こちらは河津桜を題材にした作品。瞬間的な美しさを持つ桜は、谷中さんにとっても植物を描く根源にとなるモチーフ。淡くも味わい深い桜の花の色彩に、日本画の画材にしか表現できない奥深さを感じる作品です。
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STORY

倉本:画を描き始めた頃から植物を描いていたのですか?

谷中:子供の頃から自然を描くのが好きでした。人物を描くのは苦手ですが、植物は自分のなかでモチーフと対話ができて、自分の気持ちを落とし込むことができるので、自分にとっては会話ができる存在です。

倉本:植物のどんなところに魅力を感じていますか?

谷中:植物は死生観と言いますか、人と比べても生まれてから死んで、また生まれて……というサイクルを短い期間で見られます。それをモチーフに、生きていく連鎖や、あとは花や実が見せてくれる、瞬間的な美しさを表現したいと思っています。例えば桜なら、わたしは花の散り際、若葉が出てくる時期の姿に感銘を受けます。桜は題材としてというよりも、自分が精神的に描きたいものとも一致しますね。画を描く前に題材となる植物を観察しながら、その植物のことを調べたりする過程も好きです。

倉本:そうやって植物への見識を学びながら描いた作品であるのに、写実よりも印象的なテイストが強いのも、谷中さんの個性ですね。

谷中:わたしは古典的な日本画の技法や画材を用いているので、それも印象的に見える理由だと思います。昔からいろんな人が美しいと感じてきた色や技法・素材が好きで、それらを使うことで、わたし自身も画材に助けられているというか、共存する感覚があります。例えば、桜の花の色を描くときは、綿臙脂というラックカイガラムシから抽出した絵具と貝殻の粉末を混ぜていたりしています。

倉本:それが作品が持つ独特の色彩感につながっているのですね。

谷中:日本画の画材は、石油由来の絵の具とは異なり、優しい輝きや色味があり、光の加減によってもそれが変化します。絵の具の定着に使う膠(にかわ)は古くは5000年以上前の大陸で使用され、それが日本に伝わって画材として使われていたりもします。こういった古来の画材を保存する取り組みがありますが、それらの画材を用いた表現する人がいなくなってしまったら悲しいです。わたしは伝統的な画材や技法にみられる自然由来の美しさが好きなので、それを使って画を描きたいと思っています。

倉本:“美しさ”というのは谷中さんの表現にとってのキーワードなのですね。

谷中:数年前に気持ちが落ち込んでいたときに、自分が前向きになれる画を見たくなり、そういった画を描きたいと思うようになりました。誰が見ても“美しい”と感じる画は、わたしにとってポジティブな気持ちになれる作品でもあります。花や植物を見たときに綺麗と感じ、描きたいと思う感覚が、自分にとっての“今”を表現するものだと思っています。