National ● Dice
作品概要
- 制作年
- 2019年
- 使用素材
- サイコロ、材木
- サイズ
- 290mm(幅)×290mm(高さ)×290mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:高島さんの作品を観たのはSICF2018で見た「WAR IS PEACE」でした。千羽鶴をモチーフにしているんだけど、紙で折られているのは無数の黒い爆弾という。皮肉に満ちた表現でありながらも、すごくコンセプチュアルだと思いました。あとは以前から作られているサイコロの作品も面白いなと思っていて。この表現にどう辿りついたのですか?
高島:最初は2005年で、今のようなサイコロのカタチではなくて平面で、床置きにしていました。この作品を展示するたびに買い足してどんどん大きくなっていきました(笑)。けっこう昔ということもあるので、当時の状況は自分でも忘れてきていますが、今よりもゆるやかな雰囲気だったから、ガチっと固まらないで、日の丸も曖昧でぼんやりしていたんですよね。
倉本:日本の国旗をサイコロで表現した作品でしたね?
高島:そうです。それに、サイコロの“1”の目が赤いのは日本だけだったから、国旗を作ってみようと。でも、その後に東日本大震災が起こって、多分他の作家さんもそうだったと思うのですが、こんな作品を作っていていいのかと悩むこともあって……僕はアイディア先行のタイプなこともあって、作品を作るペースがダウンしてしまって。「WAR IS PEACE」や新しいサイコロみたいに、自分のなかで新たに作りたいものが整理できてきたのは、ここ2~3年なんです。
倉本:なるほど。では、2005年の頃とは、サイコロの作品に込める意味合いも変わってきたんですね。
高島:当時はサイコロをくっつけていなかったので、一度作ったらバラバラになる状態だったのですが、今の無理に団結を求める社会を見ていたら、固めてしまおうかなと。それぞれの面で何かを見せるために他が全部協力しているという。でも、本来サイコロはやっぱり目が変わることが目的なはずであって、それができなくなったサイコロには何の意味があるんだろうという。
倉本:2005年の頃はもっと自由だったのに、統制されすぎている日本へのアンチテーゼ的な意味があるわけですね。ここ2~3年で高島さんが新たに作品を作りたいと思うようになった経緯みたいなものはあったのですか?
高島:ジョージ・オーウェルの『1984』を読んだのがきっかけになっていますね。あの本の物語に出てくる“党”に3つのスローガンがあるのですが……。
倉本:そういうことか!「WAR IS PEACE」はまさに1984の“戦争は平和である”ですね。では、サイコロは……“自由は屈従である”?
高島:それと“無知は力である”にも通じるのですが、国家にお膳立てしてもらって、細かい意見を持たずに追随しているほうが楽だと。やっぱり考えることってめんどくさいんですけど、大事なことだと常々思っていて。僕がやっていることなんて微々たる力ではありますが、美術を通してそういうことをしないと、と思って。なので「1984」にならって、爆弾、サイコロ、今作っている新しい作品で、三部作にしようかなと。
倉本:三部目は何を作ろうと思っているんですか?
高島:まだ秘密です(笑)。
倉本:ということは、“無知は力”をテーマにした何かや。新しい作品、楽しみにしていますよ!