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媚量致死

近藤智美Satomi Kondo

作品概要

制作年
2017年
使用素材
キャンバス、アクリル
サイズ
1,000mm(幅)×2,530mm(高さ)

これやんの作品コメント

戦前の画家の描いたカズオ・イシグロの著書「浮世の画家」のTVドラマにて、画が使われて話題となった近藤さん。この作品は、禅画をイメージして“人間が一生で媚びる量を180cc(一合)と決めて、その基準を超えて死ぬ瞬間は媚びなくても良い”というのがこの画に込められた禅語であるという、コンセプチュアルな巨大作です。日本酒のみならず、掛け軸の模様まですべて手描きで描かれたこの作品、卓越した画力を持ちながらも、絶妙な“脱力感”が同居しているのが魅力的です。
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STORY

倉本:僕は近藤さんの絵のタッチに加えて、一筋縄にはいかないコンセプトとユーモアがとても好きで、お声がけしたいと思っていました。どういう流れでこういう画家になられたんですか? 独学なんですよね?

近藤:はい、独学で勉強しました。小さい頃から絵は好きでしたが、その後しばらくは絵が役に立つ現場にいなくて。スナックで働いていたときにお客さんの似顔絵を描いたりもしましたが、その時は絵を描くのは生活の足しになるくらいなものだと思っていて。そこからいろいろあって、何も分からずにただ描いているだけじゃダメで、描かないと生きていけないってところまで自分を剥き出す作業をしました。私にとっては美大っていう選択肢はなくて、それよりも一人で考える時間が欲しかったんですよね。

倉本:自分でひとりでこの技術力を獲得したんや……凄いですよね。そういう作業を経てどんな変化があったのですか?

近藤:“自分が、自分が!”って意識が無くなっていったんですよね。考え続けたら……ある時点でまったく自分がいなくなったことが分かって。その時に“あ!この地点だ”と。こんなに絵に対してのめり込んでいたのにちょっと“ぷっ!”っていう。笑いが欲しくなったんです……たぶん枯渇していたんでしょうね。その時に人間の存在自体が面白くなっちゃって、だんだん腹から笑えてくるというか、世界に対して笑いが止まらなくなった時があって。そういうニュアンスでしか伝えられないんですけど。

倉本:なるほど。全部がボケとして捉えられて、突っ込んでいけるみたいな感じですよね(笑)。

近藤:そうしたらどんどん入れ子になっていったというか。自分が器になって無くなってしまったんです。それで私はもう自分なりの表現で行こうと思うようになりました。借り物でも時代に流されても、なんでもというふうに。でも、そこに笑いは必要だなって(笑)。

倉本:それで近藤さんが興味があるものを探求し、ユーモアやコンセプトを加味しながら描いていくようになったんですね。

近藤:はい、さらにそこに自分の実体験をつなげながら表現しています。