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Marcella(No.10)

田久保静香Shizuka Takubo

作品概要

制作年
2019年
使用素材
陶磁器
サイズ
125mm(幅)×70mm(高さ)×90mm(奥行き)/カップ
150mm(幅)×20mm(高さ)×150mm(奥行き)/ソーサー
特筆事項
電子レンジにはご使用いただけません。

倉本美津留のこれやんコメント

初の個展を大丸で開催し、高島屋をはじめとした百貨店の展覧会に参加する注目の陶芸アーティスト、田久保さん。中世のアンティークを想起させる豪華絢爛な茶器のフォルムを持ちながらも、凝った装飾やデザインが散りばめられていて、まるで彫刻作品のような風合いを感じます。陶芸品でありながらも美術に寄り添った田久保さんの世界観が堪能できる作品です。
SOLD OUT

STORY

倉本:田久保さんが陶芸を志したきっかけからお話をきかせてもらえますか?

田久保:学生の頃、美術で生計を立てることができる仕事について考えたときに、陶芸が一番現実的に思えたんです。彫刻のようにゼロから作り上げるものよりも、器のように制約があるほうが私には自由を感じられました。それと、昔から和洋問わず骨董品が好きで集めていたのが陶器の世界への入り口でもありました。今作っている作品も様式美や伝統的な形が大好きだった、自分の趣味からはじまっています。

倉本:田久保さんが制作している、ジュエリーのように身につけるカップ&ソーサーという発想はどういうところから生まれたのですか?

田久保:アンティークのカップを見たときの“かわいい”という気持ちが、ジュエリーやネイルアートの延長線上にあると感じたのが最初でした。それから歴史を掘り下げて勉強するうちに、中世の西洋の貴婦人たちはドレスのコーディネートのようにカップを使っていたことが分かりました。大航海時代に西洋人が日本から持ち帰った茶の湯が、西洋では婦人のお茶会として受け入れられていったわけですが、最近ではキリスト教が茶の湯に与えた影響にも興味があります。例えば「十字高台」という名碗をカップ&ソーサーにおこしたシリーズを作ったりもしていて、歴史の正しい認識よりも自分がどう解釈するが重要だと思っています。

倉本:田久保さんの作品は色も細かくて鮮やかですが、どういう風に制作していますか?

田久保:抹茶碗を作るのと同じように、手捻りでボール状の粘土に親指を突っ込んでねちねちと作り、軽さを出すために削りだしをして……と、初めての陶芸体験でやる行程に似ています。作品はまずスケッチを書くことからはじめますが、色を付ける工程は一般的に金属を調合して化学反応で起こすところを、すべて絵の具で付けています。

倉本:手作業が生み出すちょっとしたゆがみなどからも唯一無二感がありますね。田久保さんの作品が時間を経て、骨董品になっていくのかもしれません。

田久保:手捻りで作ることが私にとっては、自分の作品を打ち出したい領域には合っていると思います。まったく同じ作品を二度作ることはありませんし、色も一点ずつ変えているので、そこから“無二感”を受け取っていただけたのであれば、とても嬉しいですね。ただ、カップ&ソーサーはすでに完成された様式でもあるので、歴史を更新していくためにはそれを打ち壊していくことも必要だと感じています。用途を持つ工芸をどうやって美術と繋げることができるのか、模索し続けていきたいです。