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清涼飲料水紋図 Classic

山本太郎Taro Yamamoto

作品概要

制作年
2020年
使用素材
紙本金地着色
サイズ
242mm(幅)×333mm(高さ)×20mm(奥行き)
特筆事項
古典的な日本の絵画材料を使用しているため、アクリルなどでカバーされた額に入れることをお勧めします。額装をご希望の方がいれば別途ご注文を受け付けます。

これやんの作品コメント

日本画の流派“琳派(りんぱ)”を現代アートとして昇華させる人気アーティスト、山本太郎さんがこれやんに初登場! 初出品のために描き下ろした新作をお持ちいただきました。某清涼飲料水と流水紋のモチーフを描くことで伝統と現代をミックスするだけでなく、大企業が世界を支配するというシニカルな視点すら感じます。作品を見ることでさらに深みを感じ取ることができる、ストレートかつ駄洒落の効いたタイトルも秀逸です。
SOLD OUT

STORY

倉本:山本さんのポップでキャッチーな画風はどのようにして生まれたのですか?

山本:美大を目指していた頃、油絵を描きながら現代美術を志していましたが、やろうとすることがなかなかうまくいきませんでした。そのうちに油絵や現代美術は海外から来たものですし、日本の文化をもっと知りたいと思うようになり、大学でも日本画を専攻しました。でも、学校では自分がやりたかった古典的な日本画を学ぶ機会が少なく、日本の伝統文化全般に興味を持っていた私は、学業よりも能楽の部活動を積極的にやっていました。

倉本:そうして、今の山本さんの基礎ができあがっていったのですね。

山本:学生時代も終盤にさしかかる頃になっても、自分は何を作ったら良いのか分からずにいました。私は京都の大学に通っていたのですが、京都のお寺は美術館や博物館ならガラス越しに置いてあるような名作が目の前で見られるので、足繁くお寺に通っていました。ある日、いつものようにお寺の帰りにマクドナルドでハンバーガーを食べていたら“1時間前まであんなに荘厳な空間にいたのに、今はマクドかよ!”と自分に突っ込んだことがあり、そのときに“いや、待てよ……これが自分の生活そのものなんだ!”と思い、スケッチブックにペンを走らせた画が、今の私が表現する「ニッポン画」のはじまりでした。京都という街がなければ、今の自分の表現は生まれなかったかもしれません。

倉本:琳派のタッチに加えて、既存物を用いるポップアート的な視点が盛りこまれているのが山本さんの特徴です。作品は駄洒落のようでもあり、その視点だけでは解読できないような作品もあります。

山本:絵面で決まるときもあれば、「清涼飲料水紋図」は “カタチの駄洒落”と呼んでいて、有名な清涼飲料水のロゴマークと伝統的な波模様が似ているというところから出来た作品です。ほかにも、先にタイトルありきの駄洒落から生まれたり、コンセプトを積み重ねて作る作品もあります。日本語は同じ音でも意味の違う言葉がたくさんあり、和歌の掛詞のように短い言葉のなかに二重の意味を持たせる遊びは、日本の文化のひとつでもあります。

倉本:数ある日本画のなかでも、山本さんが琳派を好きになった理由は何でしたか?

山本:今では琳派=大層なものだと思われがちですが、その実体はもう少し気軽というか。初期の俵屋宗達も古典絵画からモチーフを拝借して、それをミックスして作っています。それと琳派は権力者・貴族、神社仏閣ための芸術ではなく、“町衆”と呼ばれる京都の裕福な町民が新しく生み出した芸術です。彼らは自分たちの生活を彩るために芸術作品を買うようになったのですが、それは今の現代社会におけるアートの感覚にも近い。そういった琳派が持つ親しみやすさが好きですね。

倉本:まさに現代版の琳派を表現する山本さんですが、琳派のことをどう捉えていますか?

山本:私のなかで琳派は、日本美術のなかで一番長く続いているムーヴメントだと思っています。琳派はおよそ100年ごとにリバイバルが起こっていて、第一世代が本阿弥光悦と俵屋宗達、第二世代が尾形光琳・乾山兄弟ですが、このふたつ世代は100年離れているので交わることもなく、単純に第一世代の作品を見て影響を受けて、同じような画風を描き始めています。その100年後に起こる第三世代の酒井抱一、鈴木其一の「風神・雷神」は尾形光琳の作品をモチーフにしていて、実は第一世代の俵屋宗達が描いた「風神・雷神」の存在を知らなかったりします。琳派は他の日本の伝統芸能のように血筋でつながっているものではなく、単純に過去の作品をみてカッコイイと思った人たちがはじめているので、これはムーブメントというしかないんですよ。例えるなら昔のロックがそれを知らない世代によって生まれ変わる……そんな音楽のリバイバルにも近いような感覚です。