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リズム

清水智裕Tomohiro Shimizu

作品概要

制作年
2019年
使用素材
油彩、キャンバス
サイズ
333mm(幅)×333mm(高さ)×20mm(奥行き)
販売価格¥82,500(税込み)

倉本美津留のこれやんコメント

「Independent TOKYO」のグランプリ受賞経験もある人気作家の清水智裕さん。その代表的なモチーフでもある少女を描く画風からの脱却を図った最新作を、これやんにて出品していただきました。清水さんが生まれてすぐの頃に見たという、団地の窓の並びの記憶を掘り起こしたという作品で、ざらついて退色した感じがまるで8mmのフィルムのような質感があり、昔の記憶らしさを際立たせています。
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STORY

倉本:清水さんと言えば少女の作風ですが、まずはそうなった経緯から話してもらえますか?

清水:学生の頃は一時、物のシルエットに面白さを感じて描いたりしていましたが、まだ具体的にこういう絵が描きたいという気持ちがあまりなくて……そんなときに落書きみたいに今のような少女の絵を描いたら面白がってもらえたんです。僕が油絵で少女を描くと全部こういう感じになってしまうんです。特に誰かに似ているわけでもなくて、でも髪型だけを似せて描けばみんなに喜んでもらえるという。それがこの人物を描こうと思ったきっかけでした。

倉本:そんな清水さんがこれまでとはまったく異なる、新しい絵を描くようになったんですね。

清水: はい。従来の絵を気に入って展示に来たり、作品を買ってくださる方々がいらっしゃって、それは嬉しいことでもあったのですが、その反面で女の子がいない絵を描いたりすると、パタっと売れなくなったこともあったりして。それが女の子を必ず描かなくてはいけないプレッシャーになってしまいました。みんな僕が描く女の子を目当てに見に来てくれているのに、描きたい気持ちはどんどん離れてしまったんです。それで2018年のなかばから“このままだと行き詰まる”という感覚がありました。前みたいに乗り気じゃないままに描いた作品は、初めて僕の作品を見る人にもその気持ちが伝わってしまっていて。とりあえず今の手法から離れないとダメになってしまうと思い、別のやり方を考えるようになりました。

倉本:具体的にはどんな風にやり方を変えたのですか?

清水:今までは普通に絵の具で描いていましたが、その描き方から変えました。新しい方法は描くのではなく、“消して”います。たまたま描き過ぎていた作品に対して、余白を大きく取ろうと思って、絵の具を拭き取っていました。最終的には全部消そうと思っていましたが、“ザー”って拭いたときの擦れ具合いは、意図して筆で描けるものではなく、偶然生まれるものだということに気がついて、この手法で絵を描いたほうが面白いんじゃないかと思ったんです。絵の具を塗ってから削ると行為は“発掘”に近くて、埋まっているものを掘り起こすようなイメージです。それに、手法さえ統一していれば、何を描いても同じやり方で描いていることになるので、女の子でも何でもいいんです。このやり方を思い付いたときはとても嬉しかったですね。

倉本: “埋まっているもの”とは、頭のなかにあるイメージのようなものですか?

清水:結局、掘り起こしているのは、過去の自分の記憶なんです。まずなんとなく塗って拭き取ってを繰り返しているうちに、何かしら出てくるものは……昔好きだったものとか、自分の経験でした。例えば「あの対決」は消していくうちに、怪獣みたいな形がでてきて“そういえば昔、ウルトラマン好きだったなぁ”っていうように、それがなんとなく出て来たら今度はかっちりと消していく。うまくカタチが取れなかったら、また塗りつぶしたりして、作っていきます。一度掘り起こすものが決まってしまえば、その試行錯誤すら楽しいですね。