きのこ切り絵標本アソート
作品概要
- 制作年
- 2019年
- 使用素材
- 和紙、銀箔、水干絵の具、墨、標本針、標本箱
- サイズ
- 347mm(幅)×256mm(高さ)×55mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:まずはじめに、なぜ切り絵という表現をはじめたのですか?
竹村:学生の頃はボールペン画をやっていましたが、いろんな作品と一緒に展示をした時に、ペンの線は“弱い”と感じたのがきっかけですね。ペンだと線の幅がコンマ数ミリありますが、切り線が一番細くて精度も高い。ですから、最初は切り絵で切った線の中にペンで書いたものを重ねていましたが、徐々に切り絵だけになっていきました。つまりは線を追求した結果ですね。
倉本:なるほど、線の追求ですか! ベタな質問ですけど、これを作るのは大変な作業ですね。
竹村:ええ、切るときは切っ先や先端に合わせて集中しないと、焦点がぼやついてしまいますね。ちなみに下書きは裏から書いてから反転させますが、アバウトに描いてフリーハンドで切っていきます。
倉本:切ることですべてを表現していくんですね。紙は何を使っていますか? 色は黒が多いですが、色彩があるものは独特のグラデーション感があります。
竹村:紙は富山の越中和紙を使って、そこに日本画の絵の具を溶いて、色を何層かに塗っています。例えば明るい色でも裏面に墨を塗ると切った柄がよく見えるようになります。あと、金属みたいな質感を出すには、銀箔や金箔を貼ってその上に絵の具を重ねたりしています。
倉本:これはキノコの標本作品ですが、実在するキノコと、空想のキノコが混在していますね。まずキノコに惹かれたのは何が理由だったのですか?
竹村:仕事として植物のイラストをやっていて、植物には葉脈などにしっかりとした規則性があるのですが、菌類の広がり方ってそういうものがないんです。いまだにキノコはいまだに未知の種類もたくさんあるから、何があってもおかしくないみたいなところに魅力があるなと。
倉本:しかも、キノコの名前のところに作者じゃなくて“発見者”って書いているセンスが、これまた洒落が効いてるなぁ、と。それに、キノコの中に菊の柄があったりと、アプローチの仕方が普通じゃないですよね。
竹村:菌類って有機物と無機物をつなぐ存在で、有機物を分解して無機物にする。ひょこっと出てくる、ひょうきん者みたいな感じだけど、実は世の中をつなぐ重要な存在なんだぞっていう思いがあって。だから、自然のモチーフをつないでいるような、いろんなものを入れていくというイメージがあります。
倉本:なるほど、そこで先の現実とファンタジーをつなぐ話にリンクすると。キノコ自体の性質を作品表現に取り込んでいるから、こんなにも面白い標本作品ができたんやね。