さくらんぼ
作品概要
- 制作年
- 2021年
- 素材
- パネルに綿布、白亜地/テンペラ、油彩
- サイズ
- 333mm(幅)×242mm(高さ)×20mm(奥行き)/イメージサイズ
540mm(幅)×450mm(高さ)×50mm(奥行き)/額入りのサイズ
これやんの作品コメント
STORY
倉本:武田さんの作品はまるで数百年前に描かれたかのような古典的な画風です。どういう経緯でそのスタイルに行き着いたのですか?
武田:教育学部のある大学で美術の先生を目指すコースを選んだのですが、そこには画材を専門的に教えてくれる先生がいらっしゃって、同時に古典的な絵画も研究されていました。感情にまかせて描くのではなく、構築的に描いていく先生の姿を見て、このやり方は自分にも向いていると思ったのがきっかけです。
倉本:画はいつから描いていますか?
武田:画は本格的にはじめたのは大学に入ってからで、それまではずっと陸上競技をやっていました。でも、スポーツの世界は年齢的なピークがあるので、ずっと続けられて自分が追求できるものを探していました。美術は年齢を重ねるほどに良い作品を作り続けられるし、一生付き合っていけるものだと思い、本格的に取り組むようになりました。
倉本:スポーツと古典絵画はかけ離れたイメージのようでも、武田さんにとってはどこかで似たところがあったのかもしれないですね。
武田:たしかにそうかもしれません。陸上の種目は400mでしたが、つらさに耐えたり、戦術を考えながら、じっくりと突き詰めることが好きでした。今の自分が絵で表現している時間をかけて構築していく技法と似たところがありますね。
倉本:武田さんの作品は静物画が多く、とても写実的な表現をされていますね。
武田:はい、でも、ただ写実的なリアリティを求めるのではなく“リアルとは何かと”いう考え方まで、絵のなかで表現できるように深めていきたいです。
倉本:具体的にはどんなことを意識して描いているのですか?
武田:長い時間をかけて描くので、例えば花をモチーフにしたら、下絵を描いて色を付け始めたくらいで萎れてしまいます。そうなると自分が表現したい花の本当の姿はどこなんだろうと。一瞬を切り取って表現するのか、もしくは時間の経過を作品に閉じ込めたほうがいいのかとか、そんなことを問いながら描いていますね。
倉本:絵肌がなめらかで美しいですが、どんな風にして描いていくのですか?
武田:初期のフランドル派と同じようにパネル(板)に描いています。綿布を貼って地塗りをして磨きあげたら、テンペラ絵の具と油彩を使って描きます。絵肌の艶にこだわっていて、見た人に透明感を感じてもらえたらいいなと。油彩というとゴッホのように凹凸のある筆致をイメージされる方が多いと思いますが、油彩は薄く塗ると透明感があって光沢が出ます。絵の具そのものの色ではなくて、重ねていくことで生まれる独特の色味があります。僕よりも絵が上手い人はたくさんいるので、材料や技法の研究も重ねながら、構築的に描くことで画の魅力を出していけたらなと思っています。