静けさの行方 02
作品概要
- 制作年
- 2022年
- 素材
- 綿布、油彩、エンコースティック
- サイズ
- 410mm(W)×530mm(H)※P10号
これやんの作品コメント
STORY
倉本:大河原さん独特のアヴァンギャルドな画風に至った経緯を教えてもらえますか?
大河原:大学の授業でヌードデッサンを描くうちに、人間を描く面白さに気がつきました。人間の外面を描いてはいるのですが、精神性とか内面を描きたいなというふうに至りました。
倉本:なるほど、その頃に基礎を叩き込まれた感じは画からも伝わってきます。人間の肉体や骨格をしっかりと学んだ果てに、内面が出てきている作風なので、深い感じがします。
大河原:題材の面では私が小さい頃に、両親が私に広島や長崎に連れて行かれたときに、悲惨な人類史を見せられた影響もあって、人間の美しさだけではなく、生の感覚を出せるといいなという気持ちもベースにありますね。ですから、私の絵は鎮魂のイメージもあって、体の一部が隠れているのにはそういった背景があります。
倉本:そこに根底があると聞くと、作品のメッセージ性もより増しますね。
大河原:大学院を出た頃、NYに住んだ時期があって、アメリカは電車で大声で話してたり、良くも悪くもマナーを守らない方も多くて(笑)。その一方で日本はマナーも行き届いて綺麗ですが、常識に囚われたり、社会的な抑圧感があって少し生きづらさを感じることもあって。この作品で口が隠れているのは発言しづらい抑圧感を表しています。絵の人物のブレも自分の存在や価値が見出しづらい時代なので、その辺りをもっと表現したいなと思っています。既成概念に捕らわれていることや、そういう目に見えない呪縛みたいなものをテーマにしています。
倉本:作品で見られる縦線の表現が面白いですよね。絵をぼかしたり、崩している部分は後からやっているのですか?
大河原:最初から崩して描きつつ、そこをさらに崩していますね。目の部分は最初はもう少しリアルに描いていました。描き起こしたり変えたりというのを繰り返しています。蜜蝋を混ぜた絵の具を紙に置いて、その上に黒をかけて、削って、その上に違う紙をあてて、裏から転写させて、その上にドローイングで描いています。
倉本:画材の研究もされているんですね?
大河原:ええ、すごくこだわって研究していて、色んな素材を見つけては子どもみたいにワクワクしています(笑)。
倉本:ワクワクしながら作品が作れるのは楽しいですね! 絵画には発明という側面もあって、新しい使い方をどんどん開発していくことはとても大事ですよね。