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いんすぴ展 アーカイブ企画 Vol.1「やさしい(優しい)」

日本語×現代アートの企画展「いんすぴ」展Vol6は、5月8日までパークホテルで開催中です! この記事では過去のいんすぴ展の作品を取り上げ、企画展の面白さを掘り下げます。

いんすぴ展は毎年、各アーティストにことばのテーマをもとに作品を制作してもらっています。テーマとなる言葉は、毎年新しいものに入れ替えずに同じものを用いています。そのため毎年、同じテーマで制作された作品も多く存在します。この記事では過去に同じテーマで制作された作品を紹介します。

今回は毎年主題しているこのテーマで制作された、過去のいんすぴの作品をご紹介します。

 

「やさしい(優しい)」

 

from いんすぴVol.1 OZ-尾頭-山口佳祐

【作者コメント】

私の画からは想像しにくいテーマだったので難題でした。どんな画にしようか考えたときにふと、以前に見た映画のワンシーンが頭をよぎって、そこからモチーフを持ってきました。自分は親でもあるので、子に対する親の目線でのやさしさをテーマにしました。このタッチのシリーズ「擬音態画伝」で、一枚の画に二人の人物を描くのは初めてでした。「やさしい」というお題ですが、作品のタイトルは「ほろり」とつけていています。もろく散りゆくさま、涙が一滴落ちるさま、何かに心が動くさまなどが「ほろり」というオノマトペの意味合いで、それを盛り込みました。このシリーズにうまく溶け込ませたかったのでビジュアルが先行で「やさしい」という言葉は、後からついてきた感じです。

 


 

【作者コメント】

難しいお題がきたなぁという印象でした。具体的な情景をいくらでも思い浮かべることができるという意味で。そこでもっと漠然と、ニュアンスで「やさしい」が伝わるような作品にしたいと思いました。絵をみてタイトルを見て、また絵を見直すような、そういう作品です。
去年の春ごろからキャンバスに絵の具をぐしゃぐしゃに塗り広げたあと、布などでふき取ることで人の形を見つけ出す、という描き方をやっています。これはぐしゃぐしゃの世の中でも、ちゃんとその中に人間が存在している、という状況を表現しています。そんな混沌とした中でも余裕があって人を助ける、手を差し伸べる思いやりのある人もいるっていうのが「やさしい」んじゃないかと思い、作品にしました。
遠目にみると何を描いているのがわからないようですが、近くで見てもらうと実は人がひそんでいる。だまし絵を見るような感覚で楽しんでもらえたらと思っています。

 


 

【作者コメント】

「やさしい」という言葉から冬のやさしい光が思い浮かんで、そこから作った感じです。窓辺で日に当たっているのが好きなので、夏では感じられない日差しを“やさしいなあ”と思いました。
モチーフを探して冬っぽい日差しを浴びている、絵になる女性を見つけて描きました。本を読んでいるのはまあ、絵になるからいいんじゃないかなと。いんすぴは普段あんまり描かないテーマを振られるので、毎回どうしようか悩みます(笑)。
やっぱり日差しの柔らかい感じと、なにかこの時期ならではの冬っぽい日差しの感じを見ていただきたいです。色合いや日の傾き具合で冬の感じを表現しています。いつもよりアウトラインを入れて、あまり抽象的になりすぎず、わかりやすい絵になるよう意識して描きました。

 


 

【作者コメント】

「やさしい」とは押し付けるものではなく、じんわり伝わってくるような楚々(そそ)とした感情だと捉えました。
「やさしい」というテーマを聞いて頭に浮かんだのは、実際に見た光景でした。往来に面した窓なんですが、障子がひと枠だけ空いている。それを見て“飼い主さん、やさしい!”って思ったんですよね。自分のプライバシーは守りたいけど、老猫に外を見せてあげたいから一カ所紙をはずしてあげた。人と猫とのいい関係、気遣い、そこはかとない愛情を感じました。
絵と言葉が近くて、見た方が“そうだね”って、ぴたりとわかってもらえる作品にしたかったんです。やさしい状況そのものとはちょっと離れているけど、ちゃんとそれが伝わるように。
構成自体はベタベタと感情に訴えるというより、障子を使ったスッキリしたものになっているので、その辺も楽しんでもらえたらと。猫好きな人には、喜んで見ていただけると思っています。

 


 

【作者コメント】

「やさしい」という言葉から、私は記憶をイメージしました。記憶って、やさしさやぬくもりにもなると思ったので、この作品では”やさしい記憶”をヒントに制作をしました。この作品はアンティークの肖像画に描き足したり、コラージュをして手を加えています。それを特殊な光学フィルムを通して見ることで、角度によって形状が変化します。その見え方のブレによって、後からの情報などで変化したり、自分の都合で無意識に作り変えてしまう、人間の記憶を表わしました。
この作品は心に残っている「やさしさ」の記憶なので、暖かみのある色合いで表現しました。画面のなかにピンクの蝶の羽がありますが、これは幼少期の記憶を重ねて合わせています。つまり、自分にとってのやさしさを感じた記憶の作品です。いろんな角度から見て、楽しんでほしいです。

 


 

【作者コメント】

「やさしい」は抽象的な言葉なので、「やさしい」ってなんだろうと考えました。最終的には相手を思う気持ちじゃないかと思いました。それに人によって「やさしい」の感じ方が違うので、今回の作品は自分が優しいと思う人に色を選んでもらい、それを作品にしました。
いんすぴ展に参加するのは2年ぶりで、少し作品制作から離れていました。2年ぶりに良いものができたなと思ってます。細かいディテールを見てもらいたいです。

 


 

【作者コメント】

「やさしい」って案外難しい言葉だと思いました。誰かひとりにやさしくすると、別の人にはそうでなくなってしまうことって多々あると思います。なので自分が理想とする“やさしい姿”を表現しました。イメージを膨らませるとディズニーに出てくるプリンセス役のようなキャラクターが思い浮かびました。ああいう誰にでも公平にやさしくしようとする姿って難しいけど、自分にとっての理想でもあるのでそれを絵にしました。

プリンセスだと分かるようにティアラを付けていますが、こういうアクセサリーは普段の私の絵にはあまり登場しません。そういったところに可愛さを感じてもらえたら嬉しいです。背景は木陰で、作品を見た人が癒やされた気持ちになってもらえたらと思っています。

 

 


 

いかがでしたでしょうか? 紹介した作品はすべて「やさしい」という言葉から生まれた作品ですが、それぞれが似通うこともなく、個性が際だった作品になっています。「やさしい」という言葉をアーティストが自身の作風のなかでどう解釈するのか、この言葉をそんな発想で捉えたのかと驚くこともあれば、共感できるような身近な意味合いであったりもして、創作手法が見てとれるのもこの企画の面白さでもあります。

現在開催中のいんすぴ展にも「やさしい」をテーマにした作品を展示しています。こちらはぜひ会場にてご覧ください!

 

 

「いんすぴ」これやん展Vol.6 後期

会期:4月6日(日)〜5月8日(木)
会場:パークホテル東京Corridor Gallery 34
開催時間 11:00〜17:00(入場無料)

いんすぴ後期特設サイトはコチラ
前期特設サイトはコチラ

 

 

文:これやん編集部(2025年4月17日)

 

 

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