no need for conflict-争いはいらない
作品概要
- 制作年
- 2022年
- 使用素材
- アクリル
- サイズ
- 495mm(幅)×325mm(高さ)×10mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:富田さんが今の表現に至った経緯を教えてもらえますか。
富田:アートが好きだったのでアメリカのフィラデルフィアに留学し、在学していた美術大学のギャラリーでの展示をきっかけに、大学の近くにある美術館で働くようになりました。その頃、彫刻を勉強していた僕にとって、ヘンリー・ムーア(イギリスの彫刻家)のようなクラシック・アート、つまりは具象や立体的抽象物がすべてだと思っていましたが、その美術館の仕事に出かけたら、スタッフが館内をスケボーで走ったり、音楽が爆音でかかっていたり、スプレーで壁に絵を描いていて“なんだこれは?”と衝撃を受けました。
倉本:そこから現代アートに出会ったんですね。
富田:はい、その時の美術館展示は「East meets West」という展示でスティーブン・パワーズ、バリー・マッギーのようなグラフィティ・アートの展示が行われていました。そこから現代アートに携わるようになり、アートの文脈やコンセプトを理解していないとアートがわからない現状をシンプルに削ぎ落とし、できるだけ誰にでもわかるものを目指すようになりました。
倉本:富田さんがイラストで表現している“ALL THINGS MUST PASS”ですが、この言葉はジョージ・ハリスンのアルバムの名前ですよね。
冨田:そうです。アメリカにいた頃、ウッドワーカー(建具師)の友だちが指を怪我してうちにやって来たときに、一緒に聞いていたのがビートルズの『アンソロジー2』で、ジョージ・ハリスンがシタールを弾いている曲とラビ・シャンカールのレコードをターンテーブルとCDでミックスさせて、怪我の慰労として聴いていました。その数週間後に彼またやってきて、お土産に持ってきてくれたレコードが『All Things Must Pass』でした。その時の話を知人に話した際に面白いからそれを使おうということになり、イラストを描き始めました。それまでは彫刻作品を作っていましたが、このキャラクターはそのとき“突然”生まれたもので、このキャラが世界中で何かしらポジティブでユニバーサルな言語になればと思っています。彼らは誰でもない誰かであり、あなたであり私であります。顔がふたつあるのは、人には“違い”と“共通点”があることを表現しています。
倉本:毎日ひとつのキャラクターを描いているそうですが、どのようにイメージを出していくのですか?
冨田:何種類かキャラクターはあるのですが、“ALL THINGS MUST PASS”のイラストを描くときは、六角形を描くところから始めます。蜂の巣も“ハニカム”と呼ばれる強い形なんですが、やっぱり僕はそういったポジティブなイメージに惹かれることが多いです。以前はずっとデジタルで描いていましたが、今はデジタルで作ってから手で描いて仕上げています。そのほうがしっくり来るんですよね。